作品紹介
「まさか、俺がなあ……」
鏡に映る俺――女の子は、深く溜息を吐いていた。
性転換病という病によって、俺は男から女へと変わってしまった。
男に戻ることは二度とない。
しばらくの入院の後に我が家へ帰ってきたところ、声を掛けられた。
近所に住む山吹剛という、昔から世話をしていた子だ。
「お兄……ちゃん?」
「……おう、剛か」
俺が性転換病に罹ったことは知らされていたのだろう。
「こうなっちまったけど身体には異常ないし大丈夫だ。これからもよろしくな」
「う、うん。わかったよお兄ちゃん」
ぎこちないながらもそう返事してくれた剛。
俺はこれからも変わらず世話してやろう。
――そう思っていた。