あらすじ
HOME去年の夏、結婚20周年を迎えた妻と……
わたしのことが生理的に気持ち悪いと言った妻と、離婚した直後のことだった。
恥ずかしくない暮らしがしたいと言う妻のために、昼もなく、夜もなく働いていた。
その結果が、自分より二周りも若い男との浮気だとは…… と、大いに驚いたものだ。
……不思議と、怒りも悲しみも湧かなかった。
働きアリのような生活は、妻への愛情を奪い去ってしまっていた。
だから離婚が成立したその日の夜は、むしろ晴れ晴れとした気持ちだったと思う。
わたしのことが生理的に気持ち悪いと言った妻と、離婚した直後のことだった。
恥ずかしくない暮らしがしたいと言う妻のために、昼もなく、夜もなく働いていた。
その結果が、自分より二周りも若い男との浮気だとは…… と、大いに驚いたものだ。
……不思議と、怒りも悲しみも湧かなかった。
働きアリのような生活は、妻への愛情を奪い去ってしまっていた。
だから離婚が成立したその日の夜は、むしろ晴れ晴れとした気持ちだったと思う。
珍しく一人で酒を飲み、独身時代のように夜の街を徘徊した。
そして、様変わりして若者のものになってしまった街並みを見て感慨に浸っていると、視線に気付いたのだ。
「──」
もしも子を授かっていたならば……と、そんな考えが浮かんでしまうような、自分の娘ほども年の離れた少女だった。
自分のような中年と電車で隣り合ったなら嫌な顔をして離れていきそうな、女子校生という名前の生き物だ。
だが彼女は、離れるどころか近付いてきた。 そして言ったのだ。
「ねぇ、もしかしておじさま、暇しちゃってるの?」
「ねぇ、もしかしておじさま、暇しちゃってるの?」
むわり──と。
生意気に、濃厚な牝の匂いを漂わせながら。
生意気に、濃厚な牝の匂いを漂わせながら。